022: 学生がスポーツに打ち込む意義〜直感力と共感力(山極 壽一・京大前総長/特別インタビュー2)

最終更新: 5月7日

"To The NEXT 100 Yrs" 次の100年へ。

《特別インタビュー》


自身も在学中スキー部に在籍し、高校時代にはラグビーに触れた経験をもつ山極壽一前総長に、学生がスポーツに打ち込む意義を伺った。


――京都大学の前総長として、京大の学生がスポーツに打ち込む意義は

 私もスキー競技部にいた。京都大学の学生がスポーツをする意味は、プロとは違う。身体を鍛えながら仲間と切磋琢磨し、試合に出て仲間と競技に興じる。身体と精神の一致を経験しておくことは、人間への「信頼感」を醸成し、社会に出て役立つだろう。


――直感力と危機管理

 もう一つ重要なことは、直感力を鍛えることだ。

「直感力」とは、頭だけでなく、身体全体の五感で知ること。直感力の鍛錬で、「ちょっと危ないな」とか、逆に自分が経験していないことでも「できそうだな」と感じる。

直感力は実は、成功に向かうのではなく、失敗を避けるために重要だ。

アフリカでのフィールドワークの経験で言うと、小さな失敗はしてもいいが、大きな失敗は命を失う。小さな失敗は成長を促すのでいくら繰り返してもいい。成功は予測できないし、自分を鍛えてはくれない。だが、大きな失敗を避けるためには直感しなくてはいけない。直感するためには、自分の身体を知り、身体と心が一致していることを自覚しないといけない。スポーツはそうしたことを教えてくれる。



――共感力とリーダーシップ

もう一つ重要なのは「共感力」だ。「痛いだろうな」「悲しいだろうな」と他人の状況を身体感覚で捉えられる人は、人々をまとめるリーダーにふさわしい。

人間はそれぞれ違う。違った精神力や体力が合わさった時に、大きな力になる。それを知ってチームを作らないといけない。

特にラグビーは、能力も役割も違う15人というたくさんの人間が補い合って大きな力を出す競技だから、「信頼感」「直感力」「共感力」が育てられるだろう。


――企業との連携

 総長時代に、丸和運輸機関様との連携が実現した。企業と大学のスポーツを通じた連携は、利潤を上げるという会社の目的とは別のところで企業と学生が大らかに触れ合うことができる。双方にとって意味がある。これからは卒業して社会に出ても、また学び直すことが増える。年齢を重ねても身体能力に合わせてスポーツを楽しむこともあるだろう。こういう機会に、世代を超えて触れ合えるスポーツのあり方を考える機会になるといい。



山極壽一さんのプロフィール

1952年生まれ。ゴリラ研究で知られる。京大総長、日本学術会議会長、国際霊長類学会会長、国立大学協会長などを歴任。2021年4月から総合地球環境学研究所長。

同じく2021年、ゴリラ研究・保全を評価され、南方熊楠賞を受賞。


(2021年1月23日収録)

取材:奥村健一(H2/LO、読売新聞)山口泰典(H4/No.8、読売新聞)但馬晋二(H24/FL、読売テレビ)


▼京都大学前総長・山極壽一さんの「特別インタビュー2」動画はこちら(約10分)


※このコンテンツへの追加情報・コメント等は、KIUR.F.C. facebookでもお願い致します。

298回の閲覧0件のコメント