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066: 国際交流1〜2008年英国エディンバラ大学親善試合(S38 米良 章生)

 京大ラグビー部は大正11年(1922年)の創部以来、海外のラグビーに目を向け新しい戦術とスキルに取り組んできた。大正15年には英国留学を終えた香山蕃をコーチに迎え、英国流オープンラグビーを実践し昭和3年から5年までの3年間に渡る全国制覇を果たした。

昭和30年代、40年代に監督となった星名泰(昭和3年卒)は、海外から最新のラグビー情報を入手し、選手に英訳させた。星名はハイスピードラグビーを導入し、チームの強化を図り、京大を計5回の全国大学ラグビー選手権に出場に導いている。カウンターアタック・モール攻撃・フッカーによるラインアウトのスローイング・スクラムハーフのスクリューパス(導入時の名はトウピードパス・魚雷パス)他は、星名の指導により京大のグランドで試され、釜石を始め日本各地に広がっていった。

 京大ラグビー部は、昭和7年1月来日したカナダ代表チームと単独チームとして対戦(5-43で敗戦)しているが、その後海外チームとの対戦の機会は限られたものとなった。

 今回は平成20年(2008年)、スコットランドの名門エディンバラ大学との宝ヶ池球技場での対戦、及びその2年後に来日したICL(Imperial College London)との対戦について、京大側で対戦の実現に尽力した米良章生(S38)の90周年誌への寄稿を再掲する。




エディンバラ大学戦


 我々の現役時代(1959-62)でも海外チームとの試合が無かったわけではない。神戸外人クラブ、台湾選抜チーム、神戸に寄港したNZ艦隊チーム等と対戦はした。しかし、これらのチームと対戦した狙いはただ一つ、身体の大きな、当りの強いチームとの試合に慣れようという事のみで、海外との交流、その他の狙いは皆無だったと言える。当時、訪日する海外チームと言えば、新聞社が招聘するオックスフォードかケンブリッジの単独チームか、オ・ケ大連合軍、或いは仏学生選抜といったところで、対戦相手は全早稲田、全慶応、全明治 関西からは全同志社といったチーム。日本にTopリーグも誕生しておらず、その頃でいう社会人チームが相手をすることも殆んどなかった。北半球の6Nations, 南半球のTri-NationsやSuper 15も無かった頃のことだ。そんな時代に京大が海外チームと対戦する機会など 夢のまた夢と言ってよかった。


 そこへ、降って湧いたように出てきたのが、2008年春のこと。スコットランドの名門、エディンバラ大学(以下エ大)との対戦の話だ。現場を預かる人達の間では、エ大とやっても強化に繋がらないのではないか、壊される(怪我をする)リスクが大きすぎる、といった懸念が強かったようだ。しかし、ラグビーを通じての交流が如何に楽しく有意義なものかを体験した一人として、ラグビーの強豪校ではないかも知れないが名門エ大のような大学チームと試合できるというのは千載一遇の機会であり、対戦申し出を受託すればいいのになー、と思いつつ、伝えたことは「エ大からの申し出を受け入れるかどうかは、様々な要因を検討しなければならないと思うので、それはそれで十分検討して欲しいが、エ大との交渉窓口、受け入れ態勢作りなどもネックの一つということなら、その部分は自分が引き受けましょう」と伝え、検討結果を待ったところ、結論は“GO”。

以後、試合を終え、送り出すまでの難しさは、筆舌に尽くし難い、というと大げさになるが、夢想だにしなかったハプニングも含め、冷や汗のかき通しだった。


(エ大)遠征費が限定されているので、宿泊は学内施設を利用させて欲しい(欧米大学のHome&Awayではよくあること)とのリクエスト

(京大)学生会館のベッドでは数不足なので、学生会館に半数、スポーツ会館の畳部屋に半数となるが、それでもいいか、と問い合わせ。

(エ大)「全員畳部屋を体験させたい」との返事で、スポーツ会館での雑魚寝宿泊。

(京大)このため、スポーツ会館に、綻びた畳の入れ替えなどもやってもらった。


(エ大)体をほぐすのに、水泳がベスト、着いた翌日、プールを使えるようにしてほしいとの要求。


(エ大)打ち上げ後、河原町へ繰り出したらしいが、一人を置き去りにして帰り、翌朝行方不明になっていることが判明

(京大)川端署に捜索願を出し、前夜の足取りを追跡調査したが見つからず。

(エ大)一行は彼を残したまま、次戦のこともあって、予定どおり東京へ。(このあたり、いい大人だから、いつか戻ってくるだろう、と誰一人残ろうともせず、後事を我々に託して出て行ってしまうなど、ドライと言えばドライ)

(京大)以後ともかく待つほかないと、スポーツ会館で待っていると、午後 ひょっこりスカート姿のまま戻ってきて、一安心。言葉の問題も含めて、いろいろあり、タクシーで大阪市内をぐるぐる回ったりしていたようだが、詳細は省略。急ぎ、京都駅から 新幹線で一行を追いかけさせて事なきを得た。


エディンバラ大学ラグビー部 日本遠征メンバー
京大に到着した一行は、休む間もなく翌日の午前から、京大の部員たちと共に京都観光に出かけた。(二条城にて)



〈試合結果〉

 2008年6月7日(宝ヶ池球技場)14:30 Kick-Off

レフェリー:原田 隆司/タッチジャッジ:新久 飛鳥・内藤 彰治

京都大学   21  -  52  エディンバラ大

前半  7  -  33

後半 14  -  19


メンバー

▼2008年度・森田組「エディンバラ大親善試合」の試合映像はこちら


 試合に付いて述べたいことは多々あるが、ここでは、湯谷監督、岡市コーチ、それに 森田キャプテンの感想を引用させてもらい、エ大戦の締めくくりとさせていただきたい。こういう試合経験ができる今のラグビー部員は本当に幸せであり、つくづく羨ましく思う。



招待試合の前に、ラムゼー・パイプバンドRamsay Pipebandというバグパイプバンドの一団がグラウンドに登場しパフォーマンスを披露。
前半。体格差で勝るEU、なかなか倒れない 。
京大は前半39分、敵陣ゴール前のモールから中越がトライ、反撃ののろしをあげる。
後半。スタミナで勝る京大、次第にラインブレイクが多くなる。
後半33分、ゴール前スクラムから展開し、大渕がトライ。

湯谷 博監督

 エ大は、高度なキックスキルを持っていたが、それに頼らず、僅かの隙でもパス攻撃を仕掛けてきた。攻撃を継続させるスキルと意識が高く、ラグビーがハンドリングゲームであることを改めて思い起こさせてくれた。京大のラインブレイクも多くあったが厚いサポート、優れたハンドリングスキルといった面で、後れを取っていた。初めての国際試合、しかも相手は強豪という事で、当初部員は躊躇する向きもあったが、ゲームを楽しみ、試合後の交歓会で交流を深めると言う、本来のラグビーの醍醐味と楽しさを十分わかってくれたと思う。エ大の練習は週2回、これまでのシーズンオフは殆んど練習していないとのこと。プレーのみならず、ラグビーの取り組み方についても考えさせられることの多い親善試合であり、大成功だったと思う。

 終わってみると、相手チームは、オフロードパスや的確なサポートによる連続攻撃など、日本のチームにはない戦術を披露してくれて、プレーの上でとても勉強になることが多かったし、その年のリーグ戦にもこの経験が生かせたと思います。何より試合後の交歓会で、同年代の外国人と交流することにより異文化を理解する糸口が掴めたのは良い経験になりました。


岡市 光司コーチ

 国際親善試合ということもあり、モチベーション高く試合に臨むのが難しく、序盤に失点を重ねてしまった。その後少しは持ち直したが、外国人特有の懐の深さ、リーチの長さにやられた。秋のシーズンでは留学生のいるチームとも当たるのでいい練習になったのではないかと思う。大体大とエ大のレフェリーもされた原田レフェリーが「基本のところでは、大体大と京大ではそんなに差はないですよ」と言って下さったのを励みにして欲しい。・・・ 

 このような国際親善試合ができたことは学生にとっては非常に貴重な経験になったと思います。


森田 暢謙 (4回生・天王寺) CTB 主将・ゲームキャプテン

勝敗にこだわることなく、純粋にラグビーを楽しめた。相手は体の大きさに任せた強引なラグビーでなく、スマートなラグビーをしていて新鮮だった。すごくいい刺激をもらったので、自分達のラグビーに生かして行きたい。本当にいい経験ができて幸せでした。ラグビーがもっともっと好きになりました。


今井 英之 (4回生・清真学園) LO 副将・FWリーダー

 前半はタックルが甘く、オフロードでボールを繋がれてしまい、簡単にトライされるケースが目立ったが、後半は少し修正出来たと思う。しかし全体を通してセットプレーは安定せず、効果的に攻撃することが出来なかった。エディンバラ大のキックの使い方やランニングコースなどは非常にうまかったので、自分達も実践出来るように練習したい。


大脇 克也 (4回生・旭丘) SO 副将・BKSリーダー

 エジンバラ大学との試合は、負けてしまいましたが、非常に楽しい試合でした。また接点での強さや、ボールを繋ぐ意識など、試合を通してエジンバラ大学から学んだことも多く、大変有意義な試合であったと感じています。今回の試合をきっかけにして、このような交流試合がこれからも続くことを願っています。最後になりましたが、今回の試合の開催に力を注いで下さったOBの皆様並びに関係者の皆様、大変ありがとうございました。

                          

ノーサイド。両チームの健闘が光ったナイスゲームだった。


最後に、もう一度 湯谷監督の言葉を引いて結びとします。


「エ大との試合は終わってみると、相手チームは、オフロードパスや的確なサポートによる連続攻撃など、日本のチームにはない戦術を披露してくれて、プレーの上でとても勉強になることが多かったし、その年のリーグ戦にもこの経験が生かせたと思います。何より試合後の交歓会で、同年代の外国人と交流することにより異文化を理解する糸口が掴めたのは良い経験になりました。ICLや台湾大学戦でも同様ですが、企画を持ち込んだ段階では部員は尻込みするのですが、終ってみると異口同音に良い経験だったと高い評価をしていました。京大はチーム戦力が貧弱なので、リーグ戦では負けるわけにはいかず、誰しも強いPressureを受けて戦っているので、秋のSeasonでは余裕を持ってラグビーを楽しむどころではないのが実情でしょう。時には、こういった国際試合を経験することで、ラグビーと相互交流を楽しんでくれれば、彼等の4年間はより実り豊かで意義深いものになると思います。」


S38年卒・S37年度主将 米良 章生(京大ラグビー部九十年誌より再編集)


アフター・マッチ・ファンクション(AMF)で京大にエールを送るEU選手たち。
二次会の「ミュンヘン」で盛り上がる両校。

京大対エディンバラ大戦の模様は、6月7日の試合当日の前後に主要新聞(読売・日経・京都)が報道、またEUのホームであるイギリス・スコットランドにおいてもインターネット・ニュースが報じている。


読売新聞朝刊(2008年6月8日)
左2つ)京都新聞(2008年5月21日と試合後の掲載)/右)日経新聞(2008年7月4日)


エディンバラ大学日本遠征団長 Reg Clark氏からのコメント


Thanks to Kyoto University RFC!

Gentlemen,

Thank you very much indeed once more for your tremendous hospitality in Kyoto. It was truly a highlight of our tour.


I attach our results statement for your information.

Just to say we would be extremely grateful to receive any team and match photos you might have together with any press coverage in the Kyoto Shinbun or other papers for our tour records. Also, if any of you happen to have any photographs of the British Embassy reception I would be grateful.

I need some and forgot to take any!

I do hope we may all meet again and that the two sides may one day play each other once more!


Regards, Reg.





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