"To The NEXT 100 Yrs" 次の100年へ。
《特別インタビュー》
ノーベル化学賞受賞者の野依良治さんは京大時代に2年間、ラグビー部に所属した経験を持つ。ラグビーという競技や、大学ラグビーを取り巻く環境が変化していく中、京大ラグビー部はどうあるべきなのか、今後なすべきことは何なのか。後輩たちへのエールを聞いた。
ラグビーという競技は、チームの勝利という共通の目的のため、いかに連携、協力して向かうか。全員で常に工夫し続ける習慣が未知と不可能への挑戦を生み、時にはそれが成功をもたらします。これは個人と社会、さらに組織と国家の関係にも通じることだろうと思います。勝ち負けでなく、この言葉を広く世の中に伝えなければいけません。
日本代表もジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ、リーチ・マイケル主将のもとでどこよりも厳しい訓練を積み、自信を持って試合に臨みました。つまり、大事なのは同質のものの足し算ではなく、異質なものの掛け算だということです。
そういうことができるようになるには、海外への武者修行っていうのが有効だと思います。イギリスに行けば人脈が豊かになるでしょうし、これは大学を卒業しても一生の宝になっていくと思います。
京都大学のラグビー部、フットボールクラブには大変大きな期待を持っています。現役部員とOBが誇りを持てる、特長ある存在であってほしいです。そのためには、創立100周年を機会に、日本最高の知性を育む京都大学の組織として、もう一度、その存在意義を定義しなおすことが大事じゃないでしょうか。学問における京大学派と同じぐらい、革新を求めたい。時代が求める大学ラグビー部とは何なのか。長期的には京大ならではの新風を吹き込む。日本のラグビーの水準の向上に貢献する。そして多様な社会的な影響の拡大を先導する。そんな使命があるのではないかと思っています。
今後、多くの京大ラグビー部の OB が他の大学や企業、国外のクラブチームの監督、コーチを務め、さらにアジア諸国の展開を先導してはどうかと考えます。無から有は生じない。誰かが最初に作ったわけです。それを作ることが京大ラグビー部の生きる道じゃないかと思います。試合をするということは一つのツールであり、目的はそういうことを通して良き人材を養成する、そしてそれを集積して良い社会を作るということです。京都大学はそういうことができるはずです。
色々なラグビーがあっていいんじゃないですか。僕らが見ると全国制覇した人達は昔々の古いことだと思ってるけど、その本人たちはメチャクチャ新しい事をやっていたわけです。元に戻ったらダメ。変革していかなきゃいけない。京大ラグビーも(1927~29年に)3年連続全国制覇をした時に戻そうとしてもダメ。歴史に学んで新しい方向に進んで行かなきゃダメです。
▼野依良治さんの「京大ラグビーへのエール」動画(約6分)
取材:谷口 誠(H14/FL、日本経済新聞 記者)
撮影:西尾 仁志(H2 /CTB)
(2020年3月22日/ZOOMにて)
▼野依良治さんのプロフィール
1938年、兵庫県生まれ。京大時代は2回生までラグビー部に所属した。1963年京大大学院工学研究科工業化学専攻修士課程を修了。米ハーバード大博士研究員などを経て1972年に名古屋大理学部教授に就任した。2003~2015年は独立行政法人(当時)理化学研究所理事長、2015年からは国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター長を務める。2001年には、鏡像関係を持つ「キラル分子」の一方だけを作り出せる「BINAP触媒」を開発した功績でノーベル化学賞を受賞した。2006~2008年には教育再生会議座長も務めた。
▼ラグビー関係者、学生のみなさんへのメッセージ動画はこちら(約5分)
●全国のラグビー関係者のみなさまへ
野依先生のご厚意により、「学生のみなさんへのメッセージ動画」(約5分)は、ラグビーのPRや部員勧誘のために自由にご活用いただけます。ウェブサイトに動画のリンクを張ったり、SNSなどでぜひご共有ください。
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