086: Oxford留学とラグビー〈前編〉(S58 塚脇 正幸/H29 大藤 勇太)

京都大学ラグビー部からは卒業生2名がOxford大学に留学している。単位取得のための厳しい学業のかたわら、それぞれのCollegeのラグビー部に入部し、世界各国から集まったラガーマンたちと交流を深めた。今回は初めて留学生となった昭和58年卒・塚脇正幸氏のコメントと、2022年現在Oxfordに在学中の平成29年卒・大藤勇太氏の留学レポートをお届けする。



Oxford留学の思い出(昭和58年卒・塚脇正幸)


塚脇正幸さん近影(2022年6月)

小生は1986-87年、Oxford UniversityのWadham Collegeに三井物産から派遣されていました。WadhamではCuppersと言われるCollege対抗戦(Division2)で数試合ゲームに出ました。Wadhamはその年のDivision2で優勝した記憶があります。時々、CuppersにもUniversity Teamの選手が出てくるのですが、スピード、当たり、切れなどすべてが別格でした。砂地の宇治グランドで練習の度に擦過傷だらけであった小生にとって練習も含めていつも芝生のグランドでラグビーが出来たのは、とても楽しかったです。当時は携帯もなく、日本に連絡するのも手紙か、公衆電話でチャリンチャリンとすぐに落ちてゆく大量の1ポンド硬貨を見ながら要点のみ話すような時代でした。今ならスマホでメール、写真も手軽に出来ますので、隔世の感です。残念ながら当時の写真を見つけることが出来なかったのですが、思い出すのは練習や試合の後に、King’s Armsというパブで1パイント1ポンド75ペンスだったビールを飲みまくっていたことです。

2013年4月卒業30周年を迎え宇治Gに集合した1983年(昭和58年)卒の同期 最後列左から三番目が塚脇さん。
Oxford UniversityのWadham College
塚脇さん、大藤さんお二人の行きつけのパブ「King’s Arms」


Oxford留学体験記 (平成29年卒・大藤勇太)


まずは私の略歴について簡単に紹介したいと思います。私は2017年京都大学ラグビー部卒部、一年間の留年を経て2018年度に外務省に入省しました。東京で二年間勤務した後に、イギリスで二年間の留学となり、1年目はキングズカレッジロンドンという大学院で戦争学を学び、留学二年目の現在、オックスフォード大学のビジネススクールにてMBA(Master of Business Administration)を学んでおります。今回はイギリスにおける留学記ということですので、現在のオックスフォードでの大学生活やラグビーの交流について御紹介できればと思います。



オックスフォードでの生活


オックスフォードはロンドンから電車で西に約1時間のところにある小さな町ですが、一歩街の中心部に入れば、500年を優に超えるような歴史ある建物に囲まれ、まるで中世の街中を歩いているかのような錯覚を覚えます。言わずと知れた大学の街であり、そこかしこに大学のカレッジが存在します。このカレッジというのが日本人には聞き馴染みなく、私も入るまでよくわからなかったのですが、全学生が所属する寮のようなものだと思ってもらえれば大丈夫です。ハリーポッターのグリフィンドールやスリザリンのように、学部生から院生まで全てのオックスフォード生は専攻に関係なく各カレッジに振り分けられ、そこで日々の生活を過ごしながら、授業があるときにはキャンパスへ出かけ授業を受けます。そのカレッジの数はなんと30以上にも及び、各カレッジによって歴史も違えばルールや文化も違います。ちなみに私はオリエルというカレッジに所属しており、小さいながらも創設1326年という素晴らしい歴史を持った建物で過ごし、図書館で勉強したり、食堂で友人とディナーを共にしたりすることは、とても感慨深いものがあります。


オックスフォード中心部の街並み。筆者の寮から徒歩2分。
筆者が所属するオリエルカレッジ(Oriel College)。
カレッジでのフォーマルディナー。


ビジネススクールでの授業


大学院ではMBAを専攻しており、会計、組織論、ファイナンス、マーケティング、戦略論といった経営学について学んでいます。およそ70の国から350人近くの学生が集まるマンモスコースであり、スタートアップやコンサルタント、マーケティングで腕を鳴らしてきた強者とともに、ビジネスについて学ぶ機会は大変貴重で刺激的です。個人的に興味深かったのは、授業において、トヨタやソフトバンクのような日本企業が普通にケーススタディとして扱われることです。特に、トヨタが考案した徹底的に無駄を排除したサプライチェーンとそれによるコストカットの達成というのは、ビジネス界において世界的な発明であり、トヨタの成功について一つの授業を丸々割くほどです。トヨタが生み出した概念である「カイゼン」、「カイカク」や「ムリ、ムダ、ムラ」といった日本語を外国人が使って議論をしているのは大変興味深く、自分よりも日本企業に詳しい同級生にいつも頭が上がりませんでした。


このように授業は面白いのですが、正直に言えば留学二年目でも、英語で講義を受けるというのは中々緊張感があります。学生は英国外からの留学生がほとんどですが、そのほとんどは米国人、カナダ人、英語が公用語のシンガポール人、インド人です。そんな学生がぎっしりと50人近く座る教室で、英語で教授に質問をしたり、学生に議論をしかけたりするのはやはり勇気がいります。


お恥ずかしながら、自分に初歩的なビジネス知識すらなかったことも、苦労した原因でした。例えば、授業をしていると教授が「Depreciation」という単語を口にします。人生で一度も聞いたことないぞ、と英→日のグーグル翻訳にいくと、「減価償却」。




「減価償却ってなに?」


こうして、「減価償却 分かりやすい 解説」と、グーグルに打ち込む悲しい時間が始まります。そしてなんとなく減価償却の意味が分かってきたぞと顔を上げると、減価償却の話は終わっているのです。このような負の連鎖が続くと、さらに発言しにくくなるのですが、ただ地蔵のように座っているだけではそこにいる意味がありません。海外では、沈黙は間違ったことを言うよりもネガティブなものとしてとらえられます。事前によく準備し、何か思うことや反論したいことがあれば、とにかく手を挙げてみる。英語が下手くそだろうが、間違えようが、しゃべったあとで考えればいい。そういった姿勢で、授業やチームでのグループワークに臨むようになってから、より学業を楽しめるようになりました。


授業風景
クラスメートたちとビジネススクールの前で。

欧米人が議論好きというのはまさにそのとおりで、授業中はもちろんですが、食事中や旅行中ところかまわず議論を吹っ掛けてきます。例えば、米国からの友人を食事に招いた時に「日本政府が原発の汚染水を海洋放出していると聞いたけど、私よくないと思うわ」と言われたことがありました。「人の飯を食らっておきながら貴様」と心の中で思いながらも、もちろん正しく反論する必要があります。「日本が放出しているのはきちんと国際基準に合わせて処理された水であり、君のところのアメリカも日本の方針に同意しているよ」と言うと、「なるほど、それなら理解したわ」と返してくれます。議論における素直さというのが彼らの大きな強みです。私が好きなフレーズで海外の人がよく使うのが「Agree to disagree」。見解の相違があることに同意するという若干皮肉な言い回しですが、どれだけ意見が違ったとしても、最後はまあ意見が一致しないという点では一致できるかな、という議論という行為に対する彼らのポジティブな姿勢を象徴するフレーズです。


>後編につづく


S58年卒 塚脇 正幸/H29年卒 大藤 勇太


 

トピックス/京大ラグビー部創部百周年記念 シンポジウム開催及びウェビナーのご案内


来る2022年7月10日(日)13時より、創部百周年を記念してシンポジウムを開催いたします。無料のウェビナーをご用意しておりますので、ぜひご参加ください。

〜シンポジウムテーマ〜

「学生スポーツとしてのラグビーが目指すべき将来像」


日時:2022年7月10日(日)13:00〜 ​場所:京都大学時計台記念ホール ​無料ウェビナー同時開催



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